2010年10月1日金曜日

もしも月がなかったら


ニール・F・カミンズ著 東京書籍
1999年7月発行 本体2200円
第一刷が1999年に発行された本ですが、2010年9月に発行された「もしも月が2つあったなら」という同じ著者の本の横に本書も平積みにされ売られていました。本書はタイトルの「もしも月がなかったら」の通りに、もし月がなかったら地球や地球上の生命はどうなっていただろうかというような思考実験をして見せてくれる本です。月がなかったらの他に、月がもっと地球に近かったら、もっと地球の質量が近かったら、地軸がもっと傾いていたら、など全部で10のもしもを説き明かしてくれています。
著者は天文学・物理学の教授と紹介されています。そのせいか、もしもに続く、天文学的・地学的な話の展開はさすがです。例えば、第一章の「もしも月がなかったら」。月は火星サイズの天体と地球の衝突で生まれたと考えられていますから、もしも月がなかったらということは地球がその衝突を経験しなかったということになるので、二酸化炭素に富んだ大量の原始大気を失わずに濃い大気の下で生命がスタートします。また月がないと月による海水の潮汐作用がないので、地球の自転が遅くなる程度が少なく、現在で一日が8時間くらいになるとのことです。こういった感じの展開が各章で興味深く解説されています。
そしてそういった条件のもとでは生物にどんな風な影響があるのかというお話しが続きます。でも、この生物に関する話の方は読んでいてとても嘘くさいというかこじつけっぽいと感じてしまうレベルです。空想の羽を目一杯羽ばたかせたお話しなら、マンアフターマンくらいに突き抜けている本の方がずっと面白い。例外は、電波を見る目はとても大きくない(電波望遠鏡を連想させる説明が展開されていました)と機能しないから生物には無理などときちんと説明されている第9章の「もしも可視光線以外の電磁波が見えたら」ぐらいでした。
半分は面白く勉強になるけど、半分は微妙、な本でした

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