2010年9月11日土曜日

中世の女の一生 新装版



保立道久著 洋泉社
2010年8月発行 本体2500円
貴族など上流の女性の成人を意味する儀式、裳着。庶民の女性の場合には裳ではなく、大人になると褶(しびら)という布を腰の後ろ側に巻いたのだそうです。前掛けを後ろ前にしてお尻にかかるような感じ。こう言われてもどんなものかぱっとイメージがつかめなかったのですが、絵巻などから採られた絵が多数添えられていて、一目瞭然。
貴族女性の部屋の隅の床に開けられたトイレ用の穴の話から、貴族の行列の中には貴人のつかう携帯用の便器を持った人が一緒に歩いていたことが絵で示されていたりもします。こんな感じで、絵画資料、ものがたり、日記文学などをもとに、女性の生活の実相、細々したことを教えてくれる本です。解説図の役割をする絵が適切におさめられていて、とても分かりやすく面白く読めました。保立さんの著書は、他にも物語の中世、黄金国家、平安王朝と読みましたが、どれも読みやすいし、興味をひくものばかりです。みんなおすすめ。


褶(しびら)をつけた女性の例が10枚以上載せられていますが、ぼろを着ているという感じの人はいないですね。また、これらの絵の女性の褶または衣服には模様が付いている人が半分以上。どんな色のどんな色素で模様を付けたんでしょうか。
七歳以前に死んだ子供は葬式・仏事などせずに、袋に入れて山野に捨てたことが史料からひかれています。先日、永原慶二さんの苧麻・絹・木綿の社会史を読んだせいもあるのですが、麻製の袋に入れて捨てたんでしょうか。布でできた袋って作るのにかなりの労力を要しそう。ある程度、裕福な人たちだけの慣行だったんでしょうか。また、金目の物欲しさに捨てられた袋から死んだ子供を取り出して捨てて布袋だけ奪う人はいなかったのかなとか。

などなど、面白い本なのでそこから妄想が尽きません。

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