2010年7月19日月曜日

ペリリュー島戦記

ジェームス・H・ハラス著 光人社NF文庫638
2010年4月発行 本体1000円
太平洋戦争中の上陸作戦のうちで、硫黄島・沖縄とならびアメリカ海兵隊が多くの被害を出した戦いであるペリリュー島の戦いを描いた本です。原著は1994年にアメリカで出版されています。著者はライターで、この戦いに参加した人たちに取材して本書をまとめたそうです。
2年前に講談社学術文庫から出版されたペリリュー・沖縄戦記を読みました。ペリリュー・沖縄戦記の方は実際に戦いに参加した海兵隊員の著作です。こちらは海兵隊に入隊してからの訓練の様子や沖縄戦についても扱っているので、ペリリュー島での戦いについての記述は文庫本で180ページほどの量(本書は500ページ以上)でした。ただ、戦いの激しさについてだけではなく、三十数年後に振り返って記したものとは思えないくらいに、自分の周囲で起きた小さな出来事・エピソードがもりこまれているてんが特徴でした。ディテールを知りたい人にはこちらもおすすめ。
本書にも戦いの激しさや読んでいてつらくなるようなエピソードもたくさんとりあげられています。しかし本書の特色は、ニミッツやマッカーサーの意向、ウルシー環礁以外の攻略を無駄として反対していたハルゼー、上陸前から第一海兵師団の師団長の楽観的すぎる見方を持っていたこと、同時期に行われたフィリピンの戦いが順調にすすんだために2ヶ月にもわたる激戦で攻略したペリリュー島が戦略的には意味のないものとなってしまったこと、日本側の指揮官であった陸軍の中川大佐がパラオ本島の司令官に連日送った報告などにまで目を配って説明してある点です。個々の島の守備隊の抗戦意欲とは別に、この時期の日本軍の弱体化がアメリカの予想を超えていただったことがよくわかります。
ペリリュー・沖縄戦記を読んだ時にも感じたことですが、死傷者の多さ、暑さや水の不足、排泄物の処理の困難さなどなどに海兵隊が悩んだことが書かれていると、守備側の日本兵は同じ問題にもっと苦しんだろうと思われて仕方がありませんでした。

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