2009年8月18日火曜日

今日公示の衆院選に政権交代を期待

昨日、投票所入場整理券というのがポストに届いていました。公示は今日だということですが、ポスター掲示板と同じく、入場整理券も事前に準備しておくものなのですね。

で、来る衆議院選挙。マスコミは政権選択選挙と報道しています。マスコミの誘導に乗る訳では全然ありませんが、私も今回の衆議院選挙では政権交代に期待しています。現在日本社会の閉塞感は政治の貧困に負うところが少なくなく、その貧困の一因は本格的な政権交代が半世紀以上にわたって行われなかったことにあると私は考えます。1990年代の細川政権・羽田政権があったではないかとおっしゃる方もいるかもしれませんが、あの時の衆議院第一党は自由民主党であり、本格的な政権交代だったとは言えないと思います。なので、今回こそは、衆議院第一党の交代による政権交代をぜひ期待しているのです。

もちろん、政権交代が実現したからと言って、問題の多くがすぐに解決するだろうなどとは思いません。政権交代が常識化している他の議会制民主主義国でも、政治に関する問題は多々ある訳ですから。ただ、日本でも政権交代が自然に行われるようになれば、万年与党と官僚の間の癒着など、ある種の問題は改善していくはずです。

ただ、「責任力」などという見慣れない言葉を持ち出して、安倍・福田両首相の政権投げ出しの無責任さを知る国民に対して、どの面下げて訴えるつもりなのかという印象の自由民主党と比較してみても、民主党の政策の方がずっとましなものかどうかについて疑問がない訳ではありません。例えば医療に関して民主党のマニフェストを見てみると、
医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する
【政策目的】
○医療従事者等を増員し、質を高めることで、国民に質の高い医療サービスを安定的に提供する。
○特に救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建し、国民の不安を軽減 する。
【具体策】
○自公政権が続けてきた社会保障費2200 億円の削減方針は撤回する。医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する。
○OECD平均の人口当たり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする。
○国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する。
○救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う。
○妊婦、患者、医療者がともに安心して出産、治療に臨めるように、無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する。
といった政策が掲げられています。医療崩壊と呼ばれるような事態の解決に向けては医師の養成数を増やす対策があげられていますが、これだけでは全く不十分です。産科・小児科をはじめとした救急医療の荒廃は、病院勤務医の労働条件の過酷さ(当直を挟んで二日連続の勤務が当たり前・処理すべき書類の増加など)と理不尽な医療訴訟(刑事・民事)が主因です。病院の医療にもっともっとお金をかけて、病院勤務医の数を増やし労働条件を真っ当なものとすることがまず必要です。また、医療訴訟については民事裁判を政府がどうこうすることは困難でしょうが、大野病院事件・杏林大割り箸事件などのような不当な刑事訴訟をなくすことが望まれます。大学医学部の定員を増やすだけでは、医師が病院勤務を敬遠する傾向を変えることはできるはずがないし、いま私立大歯学部でみられているような入学者の定員割れが、やがては私立大医学部でもみられるようになるだけなのではないかと思います。民主党にも医師の議員が何人もいるはずなのに、「救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う」とあるだけで、踏み込んだ具体策が書かれていないことには全く失望です。私は医療以外の分野に関しては充分には分かりませんが、おそらく問題点がない訳ではないでしょう。ただ、こういった懸念があるのは確かですが、それでも日本が政権交代がふつうに行われる国になることの方を重視して、民主党による政権奪取を望みます。

ただ、考えてみると今回の選挙に政権交代を切実に希望しなければならないこと自体がとても不幸なことではあります。なにしろ西松建設事件がなければ、あの小沢一郎氏を首相にすることを望まなければいけなかったかもしれないくらいなのですから。で、この半世紀も本格的な政権交代がなく、旧植民地である韓国や台湾にも先を越されてしまったという日本の現在の不幸が何に由来しているかというと、1960年代(70年代ではもう手遅れ)に政権交代の条件が満たされなかったこと、例えば江田ビジョンの抹殺にあるのではと私は考えています。なので、1960年代、左バネによって直接・間接に政権交代の芽を摘み取り、自由民主党政権半世紀存続の基礎を築いた社会党・共産党の末裔の人たちには今回の政権交代の邪魔をしてほしくはないと感じます。また、第二次大戦後の日本の政治史の研究を志す若手の研究者がこれからぞくぞく出現すると思いますが、左バネの人たちが生きているうちに彼らのオーラルヒストリーも交えてこのテーマについての面白い作品を書いてくれることを期待します。

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