2009年7月18日土曜日

「海洋の生命史」の感想の続き

昨日のエントリーの「海洋の生命史」ですが、いちばん面白く感じたのはウナギを扱っていた第19章ウナギ属魚類の集団構造と種分化、第20章ウナギの系統と大回遊の謎、の二つの章です。


本書343ページの図2には、こんな風にウナギ属の世界的な分布が示されています。ウナギには熱帯性と温帯性のものがありますが、1939年にウナギの系統関係について研究したEgeさんによると、温帯性の3種である大西洋の両岸のヨーロッパウナギ、アメリカウナギと太平洋のウナギ(日本ウナギ)の形態はは似ているのだそうです。確かにヨーロッパウナギは安売りされている冷凍蒲焼きなどでお馴染みですから、ニホンウナギと似ているのは確かです。ただ、太平洋と大西洋のウナギに交流があるかというと、熱帯生まれで暖流にのって分布するわけですから、北極海を越えるような行き来は無理です。


そこで、提唱されているのがテーティス海仮説だそうです。これは本書349ページの図5ですが、約2億年前から新生代第三期まで存在していた赤道域に広がるテーティス海を示しています。このテーティス海を通じて分布が広がったとすると、大西洋と太平洋の温帯ウナギが似ていることも理解できますね。思いついたヒトはえらい。

ニホンウナギの産卵場所はマリアナのスルガ海山だそうです。で、なぜこの場所なのでしょうか。周囲の深い海から海面下40メートル程までそびえているそうなので、海山であることが産卵場所として必須なのかも。ただ、2億年前から現在までにはプレートテクトニクスによって海山はかなりの距離動いてしまっているでしょうから、いつごろから現在のスルガ海山が選ばれたのか、将来もスルガ海山の位置で産卵が続けられるのかどうか、気になります。

ウナギの養殖はシラスウナギから半年から2年くらいかけて出荷するそうです。蒲焼きに充分な大きさのウナギは性的にも成熟しているのでしょうか?もし半年から2年では性的成熟には短いということなら、もう少し長い期間養殖するか、またはホルモンをつかって成熟を早めることができたりはしないのでしょうか。もし性的に成熟したウナギを多数そろえることができれば、日本近海から放流するなり、または船や飛行機でスルガ海山近くに運搬して放流することができます。それによりこれまで以上の数の産卵数が得られれば、シラスウナギの不足の問題も解決して、心おきなく蒲焼きを堪能できるのではと妄想してしまいます。

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