2009年7月13日月曜日

臓器移植法改正A案 参議院で成立

参議院でも臓器移植法の改正A案が可決されました。本人が臓器提供の意思を明示していなくとも、家族の同意で脳死体からの臓器提供がみとめられたことについては、まあ、そういう考え方も充分ありだと思うし、大人の場合には問題をあまり感じません。これよって、脳死臓器移植が増えることについては反対する積極的な理由を私は持っていません。ただ、今回の改正の影響で、脳死に陥るような患者さんを担当する救急医療機関の医師の労働がさらにきびしくなるようなことがないことを期待します。

今回の改正に関して気になるのは15歳未満のヒトが対象とされるようになる点です。中学生くらいになれば大人と大きく事情は違わないのかもしれませんが、幼児・乳児・新生児と若くなればなるほど脳死の判定が困難になることをむかし学んだことがあります。そういった事情は今でも変わらないでしょうから、幼い子供たちを脳死と診断して治療を打ち切ることができる例がそれほどあるのかどうか。さらに、現在の日本では子供たちがとても大切にされていますから、急に愛児の死に直面させられた親が、我が子が脳死であることを受け容れ、短時間で臓器を提供するところまで決断できるのかどうか。このあたりが、とても困難なのではと思われてしまいます。

今回の臓器移植法改正をめぐる報道では、臓器移植が可能であれば救えたかも知れない小さな子供を亡くした親たちの様子が大きくとりあげられていました(こういう、マスコミのやり方は好きではありません)。はたして、この人たちの希望に添った展開になっていくのかどうか。もしかすると、今回の改正が日本人の常識となっていくためには、脳死と判定されるようになった愛児をもつ親たちがそれを受け入れることができるように、この方たちが啓蒙活動を続けていかなければならないのかも。

また、この臓器移植法の採決にあたっては、衆議院でも参議院でも主要な政党が党議拘束を外しました。これまで、こういう例はほとんど記憶にありません。今後、日本でも政権交代が常態化することも予想されるので、この種の法案に関しては議員の良心にもとづく投票がみとめられてしかるべきだと思います。特に、宗教をバックにした議員や公明党の議員の間にも賛否が分かれたりする様子や、衆議院では全員が棄権、参議院でもA案に一致して反対した日本共産党みたいな対応も政党の体質を浮き彫りにしてくれていて、とても興味深く感じました。

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