2009年1月10日土曜日

貴族院


内藤一成著 同成社
2008年2月発行 本体2800円

明治憲法制定過程などでの議会制度導入の検討から、戦後の廃止までを見通した、貴族院に関する通史を記した本です。面白い。

・初期議会の頃でも必ずしも貴族院は藩閥政府を支持していた訳ではなかった。
・しかし、第一議会の予算審議ではわずか五日間の審議期間しかなかったのに賛成したりなど、「近代日本の挑戦は議会政治のような高等で複雑なシステムは非西洋人には不可能であるという『常識』とのたたかい」という意識が各議員に強くあった。
・伯子男爵の互選では単記制ではなく連記制・委託投票制度が採用されたが、これを決定した伊藤博文は後日の弊害までは見通していなかった。
・解散のない貴族院が己の意志を貫こうとすると天皇にしか止めることができず、実際伊藤博文首相は政府を支持する勅語を出してもらってこともあったし、また却ってそういう事態にまで至らないように第二院として行動するように考える議員が多かった。
・有爵議員互選が連記制だったので、研究会のような大組織が生まれた。
・貧乏な華族にとっては議員歳費が有り難く、複数の華族で投票の際に協定して1人を代表として選出し、その歳費を分配していた例もあった。
・第二次大戦中に、衆議院議員の中には招集された人もいたが、貴族院議員にまでは召集令状は送られず、衆議院と違って翼賛選挙があるわけでもなかったので、東条内閣に対する批判的な雰囲気があった。
  などなど、いろいろなエピソードが紹介されていて、面白く読めました。

また、桂園体制、護憲運動・政党政治などなども、衆議院の側からみるだけでは理解できない面があるという指摘には納得させられました。

0 件のコメント: