2008年11月5日水曜日

改定新版 図説 中国の科学と文明


ロバート・テンプル著 河出書房新社
2008年10月発行 本体3800円

紀元前からの中国での発明・発見をたくさん紹介してある本です。例えば、当たり前の方法だと思われる、畑に畝をつくって一条に種を蒔くなんてことも中国の発明で、中世ヨーロッパの小麦の収穫量が播種量に比較してとても少なかったのはこの方法が知られていなかったことも一因だったそうです。

図説というだけあって、たくさんの事項が、写真・イラスト付きで短くまとめて解説されています。この分野では、J.ニーダムという人の「中国の科学と文明」という大著があって、本書の各項のリファレンスもほとんどが、それを示しています。

ニーダムの「中国の科学と文明」は近代より前の世界的な経済史を扱った欧米人の著書に引用頻度の高い名著です。日本語訳もされていますが、10巻以上あって並べると幅50センチ以上になりそうだし、また個人で買うにはかなり苦しい価格です。なので、本書のような分かりやすく安いものにも存在価値があると思うのですが、「図説中国の科学と文明」という日本の書名はニーダムの大著との関係を誤解させることを狙ったみたいで、良くない印象を受けました。なお、原書のタイトルはThe Genius of Chinaなので、悪いのは河出書房の編集者なのでしょう。

ニーダムは、本書に序文を寄せています。その序文によると、彼は元々イギリスの大学の生化学の助教授でしたが、中国からの留学生に中国の発明・発見について教えられて興味を持ち、中国語を勉強しました。その後、第二次大戦中にイギリス政府から駐中大使館に派遣されて、研究を本格的に始めたそうです。

今年の北京オリンピックにちなんでか、Natureの今年の7月24日号が中国の特集を組んでいました。その中に、なぜかニーダムについての記事が3-4ページありったのです。それによると、件の中国人学生というのはニーダムの奥さんの研究室に留学してきた若い女性で、ニーダムはその娘といい仲になってしまい、それが研究のきっかけだったとか。大研究につながった浮気ですね。

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