2008年9月22日月曜日

日本植民地研究の現状と課題


日本植民地研究会編 アテネ社
2008年6月発行 本体3600円

日本植民地研究会の創立20周年を記念して、大会での報告をまとめたものだそうです。日本植民地研究入門っていうタイトルで出版されてもおかしくないような本で、内容はこれまでの研究のレビューで、文献がたくさん紹介されています。これまでに読んだ本の位置の確認や、これから本を買う際にも役立ちそうです。

私も日本の植民地に関する本を30年ほど前から時折読んでいますが、日本帝国主義史研究から帝国史・帝国研究へと、この分野でも大きな変化がありました。それを反映して、第一章は「帝国主義論と植民地研究」、第二章は「ポストコロニアリズムと帝国史研究」となっています。専門の研究者にとっては自明のことでしょうが、この両者の関係ってそれぞれの立場の研究者の関係も含めてかなり微妙そうな雰囲気だろうと素人ながら勝手に思っていたのですが、本書を読んで多少なりとも理解できたた感じです。

ただ、帝国主義論は支配と抵抗がキーワードで、その他に対する目配りが足りなかったと批判されているわけですが、研究の行われた時代背景を考えるとやむを得なかったろうなと私は思います。マルクス主義のことは別にしても、十五年戦争の時代を実際に経験した研究者たちが、敗戦後に大日本帝国による支配について研究し始めたのはしごくまっとうなことでしょう。また、敗戦後に生まれた研究者が、マルクス主義の退潮とポストコロニアリズムを反映して、多様な分野に興味を持つようになったのも自然な流れかと。

第三章から第七章までは、朝鮮・台湾・樺太・南洋・満州に関する研究が地域ごとにまとめられています。千島や小笠原諸島も植民地以外の何者でもないような感じですが、北海道・東京の一部とされていました。内国国植民地は本書の対象外のようです。それと、樺太・南洋に関する章では、研究者の層が薄いことをそれぞれのレビュアーが嘆いていますが、樺太・南洋に関する研究者数が朝鮮や台湾に興味を持つ人の数に匹敵したら、その方がよっぽど変です。

本書とは離れますが、個人的な興味としては、朝鮮では併合・支配に対する抵抗がしっかりあったのに、沖縄の場合には大きな抵抗なく沖縄県になってしまったのはどうしてなのかってあたりも、知りたいところです。琉球王国時代にナショナリズムが育ってなかったからなんでしょうか。あと、アルジェリアやアイルランドと朝鮮とか、スコットランドやウエールズと沖縄とか似てる感じなんでしょうか、この辺も知りたいところです。

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