2008年9月1日月曜日

不許可写真


草森伸一著 文春新書652
2008年8月発行 税込み945円

毎日新聞社が日中戦争と太平洋戦争初期に撮った写真で、検閲不許可になったものをまとめたスクラップブックがあり、それを見ての著者の感想などが述べられている本です。

ふつうの新書とは違って、アート紙でできていてずっしりとした重さです。さぞや面白い写真がたくさん載せられているのかと思ったら、163ページの中に、35枚ほどの写真しか掲載されていません。しかも、元の写真は手札大(80x105mm)だったというのに、そのうちの8枚は約3x4cmとなぜかとても小さくされていて、細部までは見ることの出来ない代物です。写真自体も、多くはそれほどインパクトがあるものではありません。まあ、それだけ日本の検閲が細かいことに拘って不許可にしていたということでしょうが。

で、写真より文章の部分がずっと多いのですが、検閲の事情と掲載されている写真の説明が主という訳でもないのです。本書には「カメラの発明によって、叙事詩は生まれなくなった」と「『不許可写真』は、一コマもののマンガである」という2つの章があるのですが、特に前者は不許可写真というタイトルから受けた印象と全く違い、芸術論的な部分が多いのです。がっかりさせてくれました。

こういう新書のタイトルは編集者が決定するのだろうと思うのですが、そう考えるとこれは著者が悪いと言うより、タイトルを決めた文春新書の編集者が悪い。「カメラの発明によって、叙事詩は生まれなくなった」か「『不許可写真』は、一コマもののマンガである」のどちらかをタイトルにしていれば、別の観点からこの本を読むのでしょうから、失望せずに済んだかも知れません。

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