2008年6月19日木曜日

中世の東海道をゆく

榎原正治著 中公新書1944
2008年4月発行 本体800円

中世の旅日記などを主な材料に、東海道沿いの海岸・大河の流路・潟湖などの地形や、東海道という道路のルート・名前、宿の性質などを論じている本です。中世の宿って、宿場というより軍事的な意味をもつ基地として整備されたのが始まりなのだそうです。

ふつうの日記だと自分の住んでいる土地について細かく記されることは期待できなさそうです。しかし、旅日記だと見慣れぬ土地を訪れるわけですから、その土地の様子や気付いた点が記されます。また日記ですから日付があり、その日の出来事の起こった時刻が記されていることも多いので、潮汐表を過去に遡って適用し、日記中の干潟や干満などについての記載と対比させてあり、興味深く読めました。

浜名湖についての記載も面白い。浜名湖は大地震で遠州灘と通じるようになるまでは淡水湖だったというのが通説で、私もそれをなにかで読んだ事があります。しかし、いくつかの旅日記とその他資料から、著者は大地震以前から浜名湖が汽水湖だったとしていて、かなり説得的です。

また、潟湖が日本海沿岸に多かったことは知っていましたが、中世から近世にかけては浜松など静岡県あたりにもみられたそうです。その後の新田開発で陸化されて現在の風景になったそうです。

自然科学的な議論も交えてわかりやすく解説してある、好著でした。

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