2008年5月28日水曜日

酸性紙の変色

印刷雑誌とその時代を読んでいて思ったのですが、酸性紙・中性紙に関する記事はピックアップされていませんでした。酸性紙問題は一般にもかなり有名になりましたから、専門誌に取り上げられなかった筈はないのですが、「印刷」にはあまり関係ないからスルーされたんでしょうか。

学生の頃、卒論の材料にするために大正・昭和戦前期の雑誌を読みあさったことがありました。もともと雑誌にはそれほど良質な紙が使われているわけではないためもあるのでしょうが、どれもページ全体が茶色く変色していました。ページをめくると端の方から紙がぱりぱり折れてしまう感じで、これでは読めなくなる時期もそう遠いことではないなと感じたものです。

ああいった本の対策を、図書館はきちんとしているんでしょうか。放置されてたら今頃は、興味ある研究者が古い雑誌を手にとっても読めなくなっていそう。あれからもう20年以上経過しているので、心配ではあります。

昔は新品の本の紙ってとても白かったと思うのですが、中性紙が使われ出した頃から、ごく薄く黄色みがかった紙に変化したような気がします。一時は中性紙使用などと奥付の上に表示されていたこともあったかと思いますが、今では特にそういう表示は見かけなくなりました。でも、現在売られているハードカバーの本の紙はほとんどが薄いクリーム色なので、中性紙に印刷されているのでしょう。

学生の頃は引っ越しの都度、本の多くを処分していたので、あまり昔の本は残っていないのですが、いつ頃までの本に変色が多いのかチェックしてみました。1990年代以降の発行のものは、概ね変化なしです。もうみんな中性紙なんでしょう。


しかし、1980年代発行のものはページの周囲がうっすら茶色くなり始めているものと、ほとんど変化のないものとが混在しています。 これは、1980年10月発行の岩波新書ですが、本の周辺が変色しています。しおりは、発売時にこの新書に挟み込まれていたものですが、本文用紙と比較すると白さが際だっているので、中性紙なんでしょうか。

変色しているかどうかは、出版社ごとに違うというわけではないようです。同じ岩波書店の1980年代発行の本でも、ハードカバーの方が変色してなかった感じでした。

また、うちの書棚にも大正や昭和戦前期に発行された本もわずかながらありますが、それらすべての本に著しい変色がみられるというわけではありません。特に、アート紙の本など、染みはあってもページの周辺から変色してくる様子はほとんどみられませんでした。

変化が見られる本でも空気と接触するページの周囲の方の変色だけで、冒頭にあげた雑誌のように紙がぼろぼろになるようなものは我が家には一冊もありませんでした。図書館と違って、我が家の本は私が生きている間だけ保ってくれればいので、まあ特に対処はしなくても大丈夫のようです。

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