2008年4月9日水曜日

藻類30億年の自然史


井上勲著 東海大学出版会 
税込み3990円 2007年11月発行

600ページ以上ある本です。2006年1月に第一版が出た本で、わずか二年弱で改訂版であるこの第2版が出版されていますから、実は予想外に売れた本なのかも知れません。

前半の200ページほどはいろいろな藻類に関するエピソードがつづられています。あとの3分の2ほどは藻類30億年の歴史と銘打った部分ですが、藻類30億年の進化史を期待するとがっかりします。実態としてはここ20年ほどの遺伝子研究による生物分類の変化などが藻類を中心に述べられている本です。

私が医学部の学生だった頃に読んだ本に「五つの王国」があります。共生説で有名なMargulisが共著者の一人となっている本ですが、彼女はこの本で、生物をモネラ・原生生物・菌・動物・植物界という5 kingdomsに分類し、5界のの各門について代表的な生物の写真を示して解説してくれていました。しかし時は流れ、動物は真菌といっしょにオピストコンタにまとめられ、現在では生物の分類は、細菌・古細菌・真核生物の3ドメイン分類が主流になっています。

また、植物には一次植物と二次植物のあることが判明したのもそう昔のことではありません。本書は藻類に関する本なので、二次共生や共生の様々な段階についてはしっかり記載があります。

ただ、藻類の自然史を期待して購入した私としては少し物足りない感がなくはありませんでした。でも、10年以上前までに高校・大学を卒業していて、その後は生物学の大きな変化に触れたことのない方にとっては、内容・ボリューム・お値段を含めて最適の啓蒙書の一つだろうと思われます。

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