2007年11月8日木曜日

プロト工業化の時代  西欧と日本の比較史

斉藤修著  日本評論社  税込み3885円  1985年10月発行

いろいろな本のリファレンスでこの本のタイトルを見かけるのですが、実際に書店にこの本が置いてあるのを見たことがありませんでした。20年以上前に出版されたもの(今回買ったのは1997年の第6刷)なので、もうとうに品切れになっているのかと思ってネットで探すこともしないでいたのですが、先日ジュンク堂に行った時に偶然見かけたので、買ってきました。

本書は二つの部分に分かれていて、プロト工業化論の紹介と、前半ではヨーロッパの事例が、また後半では日本にも妥当するものなのかどうかの検討がなされています。

プロト工業化論は、フランドルの地域研究から導かれたものです。第一に、域外への輸出を目的とした農村工業の立地について、農村工業は穀物生産に不利な地域に分布していたこと、隣接する主穀生産地域では資本主義的農業の発展が促されたことが示されます。第二に、農村工業発展の経済・社会への影響として結婚年齢の低下がみられ、人口増加がもたらされて、その人口増加は供給価格の低い労働をもたらすことで、その地域でのさらなる農村工業の発展につながることが示されます。筆者はこれを人口学的な農民分解論と表現していますが、言い得て妙です。

フランドル以外のヨーロッパで農村工業が見られる地域、チューリッヒ州、ザクセン、アイルランド・コノートなどの事例について、プロト工業化論が検討され、必ずしも18世紀ヨーロッパの経済変化と人工成長に対する一般モデルたり得ないと結論されています。プロト工業化論が当てはまらない理由は地域ごとに、市場経済化の程度、農村工業に従事する者の性別分業などがあげられています。

日本でも開港以前、西日本では綿業、東日本では絹業を中心とした域外流通を目的とした農村工業が後半にみられたことが知られています。この日本の状況にプロト工業化論があてはまるかどうかを検討したのが後半です。

旧国より大きな単位での分析ですが、日本での人口成長は農村工業の盛んな地域で特に高いと言うことはなく、穀物生産が人口成長の主要因であったことが示され、この点がプロト工業化論とは違う結果です。その理由としては、繊維産業である農村工業に従事したのが主に女性であったこと、またもともと西欧に比較して女性の初婚年齢が低く、この時期に西欧とは違って初婚年齢の上昇がみとめられたことが指摘されています。

プロト工業化論は結局フランドル以外では必ずしもあてはまらない場合も多いようです。しかし、近代の人口増加の端緒を説明してくれる点や、人口と経済の相互関係の指摘などはとても勉強になりました。

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